敷地南側旧鶴来街道より見る   写真上:改修後  写真下:改修前

金澤の町家

金沢城の南西、犀川の南に位置する寺町台地区の旧鶴来道沿いにある今川酢造は、国内でも珍しい天然醸造法という昔ながらの製造法で酢を作り続けている。 150年以上前からある建物は何度も改修を繰り返されてきたが、劣化が激しく、今川酢造を含む寺町台が「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されたのを機に、地区指定第一号の改修物件として大規模改修に臨むこととなった。
改修箇所は、予算上、耐震補強、雨漏りする屋根・壁の補修、水回り、外観、内部商品展示スペースの大きく分けて5項目となった。 金沢工業大学・後藤研究室で耐震性能評価報告書をつくってもらうための実測調査をはじめ、 何度も現地調査を重ねたが、最終的には工事しながら明らかになる不具合箇所も多く、検討を重ねながら現場をすすめた。
特に外観に関しては、「重要伝統的建造物群保存地区」内の建物となるため、金沢市の歴史建造物整備課と打ち合わせを重ねた。 数少ない古写真、近隣等で現存する町家の調査を元に、昭和25年の時期を基準にしている市の方針に合わせ、その時期に近いと思われる外観に復旧することを目指した。 特に、旧鶴来道に面した町家の正面は、現状の波板の外壁をはがし、出てきた柱の痕跡を実測・図示した上、 当初上げ戸であった外観がある時期に格子戸となったことを確認し、昭和25年時点での格子戸を採用した。
昔ながらの製法で酢を作り続けている今川酢造にふさわしい、新しく懐かしい建物となった。


村梶招子/ハルナツアーキ

所在地 石川県金沢市野町3丁目
主要用途 工場・住宅
規模 地上2階
建築面積 383.33㎡
延床面積 625.47㎡
構造 木造
設計 ハルナツアーキ/村梶招子
山岸建築設計事務所/山岸敬広
構造協力 金沢工業大学 後藤研究室
施工 上柳建設/上柳亮
設備 菱機工業株式会社/表光博
竣工年 2013
写真 ハルナツアーキ